恩返しの形

下の子が10か月くらいのころから夫は単身赴任だった。次女も保育園に入れて復職した数か月後、ある日次女が急に発熱したのだが、どうしても外せない仕事があった。困っている私を助けてくれたのが、今も仲良しのKちゃんである。彼女は二人目の子の育児休暇中で、子供たちを連れてうちに来て数時間娘を看てくれた。

「うつすちゃうといけないから」と私が言うと、数時間くらいではうつらないから大丈夫だと彼女は言って4歳前の長男と7ヶ月の次男を連れて、娘を看病してくれたのだ。こんな人は中々いない。保育園に子供を預けている人ならば、きっとだれでも私がどれほど感謝したかわかると思う。

私はこの時の事をずっと覚えているし、これからも忘れない。そしてそのとき、私は心に誓った。Kちゃんにこの恩をすぐに返すことはできないけれども、私もKちゃんみたいな人になろう、と。

それから数ヵ月後に私たちは海外へ行き、その土地で生後1ヶ月の赤ちゃんとお友達になった。Dくんのお母さんSさんは私と同年代で、おっとりとしたスタイルの良い長身美人だった。ご主人も長身のイケメンで、Dくんは目がクリクリとしたとても可愛い赤ちゃんだった。

Dくんと下の子が1歳半違いで生活リズムが似ていたので、Sさんと私は仲良くなった。性格は違うのだが、料理やスポーツが好きなところなど共通点も多く、私はSさんとDくんが大好きだった。

うちの娘たちもDくんを可愛いがり、おかずのおすそわけをしあったり、散歩に行ったり、テニスをしたり、買い物を頼まれたり、、、とても仲良くしてもらった。

そんなある日、Sさんのご主人の帰任が決まってSさんたちは忙しくなった。そして珍しくSさんがDくんと体調を崩したのだ。二人とも「ちょっと風邪」程度ではなく、特に母親であるSさんが憔悴していた。ご主人は帰任前でとても忙しかった。お手伝いさんがいたのでDくんを任せる案も出たが、Dくんもそこまで懐いていないし、生まれてからD君と離れたことがないのでSさんは不安そうだった。

しかしながらSさんの体調が回復しないことには帰国の準備もできないし、Dくんの世話も出来ない。私は思い切って、「うちでDくん預かるよ」と言った。うちの子供たちに病気はうつらないだろうし、仮にうつったところでどうにでもなるから大丈夫。Sさんが集中して身体を休めないと、と彼女に言った。同じマンションだから何かあったらすぐに連絡するし、行き来出来るからと。

人一倍人見知りの激しいDくんがお母さんから離れて泣くのではないかとみんなで心配していたが、Dくんは素直に私に抱っこされてとても落ち着いていた。それを見てSさんはホッとしていた。Dくんも本調子ではないお母さんが心配だったのだろう。

数日預かったら、SさんもDくんもすっかり良くなった。Dくんは賑やかな姉(うちの娘たち)二人がいるのでご機嫌だし、ごはんもモリモリ食べて、いっぱい遊んでお母さんの元へと帰っていった。

帰国間近のSさんは私に何かお礼を、と言った。私はKちゃんの話をして、Sさんがまたどこかで困っている友達がいたらその人の力になってあげて、と言った。

私の行為が誰かの役に立っているとするならば、私はそれを自分のためにやっている。過去の自分が受けてきた沢山の優しさへの恩返しである。私は私と夫だけでは子供たちは育てられなかったし、単身赴任が長い中、その土地その土地で助けてくれた沢山の友達と何十年来の友人がいなければ、私自身も壊れていたと思う。

友達とはありがたいものだ。直接恩返しが出来なくても、恩返しの輪は無限に広がっていくのだと思う。数えきれない人たちに感謝して、私の恩返しはこれからもまだまだ続く。

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5件のコメント

  1. 海外赴任って大変だけど沢山出会いがあって成長できますよね。
    恩返しの形、素敵な考え方ですね。
    遥か昔ですが、我が家は長男も長女も海外で出産しました。本当に大変だったけれど、素晴らしい経験をさせてもらいました。
    国籍を超えて助け合っていました。

    1. 海外でご出産とは言葉や文化の壁もあって大変だったことかと。予防接種の種類も違いますしね。でもその分、一杯勉強しますし、理解しようと努力して、色んな国籍の友人が出来、親子ともども貴重な時間でした!!

  2. こんばんは^^
    とてもいいお話で感動しました pikaoも感謝して人は大きくなると思ってます この恩返しを数珠つなぎしていけば争いのない世界になるような気がしました(*^0^*)~♪

    1. pikaoさん、コメントありがとうございます。コラムに書いた「Kちゃん」はとても懐の深い友人です☆タイトルを「数珠つなぎ」にしようか迷ったので、pikaoさんのコメントにこの言葉があって心に染みました。

  3. […] ※Kちゃんとは「恩返しの形」で出てくるKちゃんである。いつもの4人は「懐かしいと淋しいの間」の仲間だ。 […]

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