たけのこ物語

たけのこは大好きだ。シーズンになると必ず買って何回か作る。今になっては定番だけではなく、糠漬け、燻製とレパートリーを広げている。たけのこは美味しい。季節を感じる食材の一つだ。

私のたけのこ物語は13歳のときの話である。

母が入院した。どのくらいだったか忘れたが、地方の大学付属病院に1か月くらい入院した。中学2年生になる春だった。たけのこの季節だった。

姉は中学3年生、私は2年生で、嫌というほど家事炊事をしつけられていたので、姉と分担して「姉:掃除・洗濯」「私:買い物・料理」と大まかに役割分担を決めて、二人で回していた。

父は妻が不在で、かつ入院しているのに、妻がいるときと同じ日常生活を娘たちに求めた。アイロンのかかったワイシャツ、磨かれた靴、父の好みと栄養バランスのとれた食事、食後のお茶の濃さとそれを差し出すタイミングまで。父の生活は何一つ変わらなかった。

父をそう育てた母も、娘たちにそこまで求めてくる父も嫌いだった。

ある日曜日、母の見舞いにも行かず、父はいつも通りゴルフに出かけ、私が部活から疲れて帰ってきたら、とてつもなく大きいたけのこが家にあった。父はそのたけのこで、先の柔らかいところは刺身と澄まし汁に、他はおかか煮とたけのこご飯にするよう私に「命じた」。

私は中学生だ。Google先生もYoutube先生もない時代だ。

料理はしないが知識だけはある父に、たけのこの下茹での仕方や調理法を「指示」され、私はたけのこに取り掛かった。固い下の部分に大きくXの隠し包丁を入れ、米のとぎ汁で下茹し、あく抜きは完璧にできた。刺身、澄まし汁、おかか煮、これも良くできた。あとはたけのこご飯を待つばかりだ。

出来上がったたけのこご飯は失敗だった。リゾットになってしまった。味付けは良いのだが、水分が多すぎたのだ。それを見た父は私にこう言った。

「こんなもの食べられるか!」

この話は中学生のときから30年以上笑い話として、既に何百人の人たちに話をしている。その中で、数年前、一回り下の男性が、「〇〇さん(私)って、打たれ強いですよね」と言った。

彼曰く「普通、中学生で親にたけのこご飯を作らされた挙句に、“こんなもの食べられるか!”なんて言われたら料理嫌いになるじゃないですか」と。

確かに。言われてみれば。でも、そんな発想は微塵もなかった。「見返してやる」以外の気持ちはなかった。そして料理は好きだ。たぶん。

考えてみれば自分の人生、「悔しい、絶対やってやる!!」と思って生きてきた。泣き寝入りなんて絶対しない。2倍3倍に成長してやる!!という笑 負けず嫌いと気の強さで生きてきた。

大人になって掴んだものは、なんでも「美味しい、美味しい」と食べる夫、好き嫌いのない子供たち、男女・親子、関係なく家事全般何でもできる(する)家族である。

そう。だから、きっと私の「たけのこ物語」はハッピーエンドだ。たけのこくらいでへこたれない。そして、今年もたけのこのシーズンが始まる。どう美味しく食べようか。ワクワクする。

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12件のコメント

  1. 筍は旬の味ですね。お母様が入院生活をおくられていても、それまでに基礎が出来ていたので難なく過ごせたんですね👏お父様も中学生の子供に無理難題を!酷でしたが、それをバネにして料理の腕を上げられたCoccoCanさんは素晴らしいです。私なら喧嘩して、きっと料理嫌いになったでしょう(^^;)余談ですが京都府長岡京市は筍の産地で、そこの筍専門店へフルコースを食べに行きましたが、やはりほどほどの量が良いと思いました(^_^)

    1. 暖かいコメントありがとうございます!!
      筍のフルコース!!!食べてみたいです♪が、適量が一番なんですね笑

  2. こんにちは^^
    CoccoCanさんは只者じゃない女性だとエピソードでよくわかりました
    倍返しの精神は人をここまで伸びしてくれるんですね☆
    みんなで旬のものを美味しくいただくことが一番幸せですね(*^0^*)~♪

    1. コメントありがとうございます!!
      きっとただの食いしん坊です笑
      旬のものはやはり格別ですよね☆

  3. こんばんは
    たけのこ物語の結果、料理好きに?
    >2倍3倍に成長してやる!!なんて 素晴らしい!!

    コメントする時、毎回、メール、名前、サイトを書かなければならないのは何故でしようね
    大抵、1度すればその後は、書いた後、コメント送信でスムーズに投稿されるのに
    ここは毎回、メールや名前、サイト書かないと投稿されない、私のアイコンも表示されませんね?
    何故なんだろうと毎回思ってますが?

    1. makoさん、いつもコメントありがとうございます。
      >コメントする時、
      これは、私のサイトの時のみにでしょうか?ご不便おかけして申し訳ありません。
      私は、PCからコメントするのはOKなのですが、スマホからコメントする時は毎回登録しなければなりません。
      いずれにしても、原因調べてみます。ご連絡ありがとうございます☆

    2. makoさん、下記が考えられる要因ですが、いかがでしょうか?
      ①コメントをくださるときに「次回のコメントでしようするためブラウザーに自分の名前、メールアドレス、サイト保存する。」にチェックをいれていない
      ②コメントする前にWordPressにログインしていない

  4. 文章を書くのが苦手なので普段はコメントしないのですが、なんだかこの投稿にすごく心打たれました。とにかく、すごい!と思いました。だって、中学生ですよ。私は高校生の時同じ理由で父と弟のごはんを1ヶ月ぐらい作っていましたが、頑張って作っても2人とも連絡もなしで外で食べてきたりして、入院中の母に泣きながら”もう私無理”と訴えたことを思い出しました。

    1. mic.mimicさん、温かいコメントありがとうございます。
      兄弟が「姉」だったから良かったのだと思います。リゾットになった、たけのこご飯を一緒に「美味しいよ」と言って食べてくれました。
      これで男兄弟でしたら、上げ膳据え膳の男二人の世話をすることになって、挫折していたのだろうと、いただいたコメントを読んで思いました。
      高校生のmic.mimicさんに「よく頑張ったね!!!」って、いっぱい褒めたいです。

  5. こんばんは。タケノコは春を感じる素材ですよね。でもあくが強いのと、調理方法にバリエーションがなく、おかか煮などは是非試してみたいですね!!
    COCCOCANの本性が少しづつ分かってきました。本当はかなりの”左党”ですね( ´∀` )

    1. すみません。コメントをいただいていたのに、見落としてしまいました。遅くなり、大変失礼いたしました。
      いつもありがとうございます。

      「左」です笑 間違いなく。
      日本の古きよきものを大切にしたいし、すべきだという観点と、刷新すべきだという観点があります。
      正直、右でも左でもどっちでもいいのですが、正しいとか間違っているではなくて、きちんと意見を交わし、
      現実的であるかどうかではなく、ブレインストーミングできる日本になって欲しいと願っています笑

  6. […] たけのこの季節になるとたまに思い出すことがある。父とのたけのこの思い出だ。父とたけのこと言えば、去年書いた「たけのこ物語」が先ず来るのだが、別の父との思い出話。 […]

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