もてない！（中編）

もてない！（前編）から

娘に連絡し彼女が選んだ傘も買って、お店で少し涼んで私たちはまた歩き出した。田舎の2両編成・単線の電車には似つかわしくない立派な駅に着いた。何故かこの駅だけ2階に改札を設けている。これまで、すっごく「特別」な何かを見たわけでもないのだが、まぁ散歩だからな、と私はてっきりここで折り返すのだと思っていた。というよりそう思うだろう。ついさっき地図を指しながら夫はこの駅を目的地だと言ったのだ。

目的地だった？駅から300mほど進んだところで、私は「ここで折り返さないの？」と聞いたら、夫はシレっと「次の駅まで行く」と言う。そうそう、こういう人だった。理系の仕事をしているとは思えないほどアバウトなのだ。夫のテリトリーには2年もご無沙汰していたからすっかり忘れていたが、山登りに行くのに駅の反対側の違うバス停に行ったり、そもそも平日なのに休日の時刻表を見たり、、、そういう人だ、この人は。そして、次の瞬間「ここからトイレがないから大丈夫？」と聞く。トイレよりも、この遮るものがない道の方が不安だ。

私たちは残暑厳しき8月の最終土曜日に、気温36度の真昼間に人どころか車さえ通らない道を線路沿いに田んぼと水路に囲まれながら歩いた。良く言えば、樹木さえ遮るもののない一本道。15分に1回（X往復）で走る電車が通る度に夫は「ほら電車が来たよ!!」と言う。いつから私は電車好きになったのだろうか。。。

確かに、緑色や黄金色の稲と赤い電車、そして真っ青の空のバランスは絶妙だ。電車好きにはたまらない絶景スポットだろう。稲穂が黄金色になる今の時期しか見られないのもわかる。でも言わせてくれ。何も、真夏の真昼間に行く必要はあるのか？涼しい早朝とか夕方とか。

気を取り直し、お腹がペコペコなので、「どこでお昼食べる？」と夫に聞いてみると、遠くにある森を指して「あの辺に神社があるから、その辺りで食べよう」と言う。そして彼は付け加えた。「ランニングするわけではないし、サッカーするより楽だろう？」と。それ、比べるところじゃないし。サッカーは好きでみんなと楽しくやっているし。ランニングは涼しい時間にしか走らないし。

私は夫に言った。「絶対にもてなかったよね」

自分の夫を褒めるわけではないが、背も高い、顔も小さい、運動神経も良い、頭の回転も速い。口数は少ないが、人の悪口は言わないし、家事も何でも出来る。が、ここを真夏のデート候補として選んで付いてくる女子はいないだろう。絶望的である。真夏の昼間にどうしても「絶景スポット」と言い張るなら、ドライブか百歩譲ってツーリング。100万歩譲ってせめて自転車。何といっても徒歩である。もてるわけがない!!!　ここを真夏のデート候補に挙げている時点でもてる要素は皆無だ。

夫は言った「○○（私）だから誘ったんだ」

この言葉に勘違いしてはいけない。炎天下の散歩になんの変わりはない笑

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