このjack-o-lanternは長女が日本でいう小4の時、2010年に作ったものだ。B国のインターへ通っていた時の学校のAfter School Activities(放課後クラブ)で作った。

その学校の放課後クラブは、無料のものから外部委託された有料のものまで多種多様で、年齢制限や人数制限があるクラブもあるが、タームごとに自由に選べる。

この陶芸クラブはかなりいいお値段だったのをよく覚えている。3月末に日本からB国へ行き、4月からインターへ通い始めた。びっくりする学費を払っていたので、クラブにさらにお金がかかるのかぁ(トホホ)と思ったからだ。

もう一つこのクラブのことをよく覚えている理由は、なぜこの陶芸クラブを選んだのか?ということだ。確かに工作も大好きな子ではあるが、スポーツが得意なのに、そういったものは一切選ばなかった。

お金のことは良いとして、何故スポーツ系のクラブを選ばないかということが気になった。今でこそ自分の意見を理路整然と言えるようになっているが、10歳くらいまでは自分の本音を親にはあまり言わないところがあったし、言葉にするのにとても時間がかかる子だった。

本人にさらっと聞いてみたが、真意がわかる回答は得られなかった。別に陶芸クラブに入ること自体は楽しいだろうから申し込むことにした。

夫に「何で陶芸クラブなのだろう?」と話をしたら、意外な言葉が返ってきた。「自分に自信が持てる、人と比べられることがない、自分のフィールドで楽しめることをやりたいんじゃない?」と。

確かに、長女は疲れていたと思う。A国から帰国して1年も経たないでまた海外へ。すっかり忘れてしまった英語での授業。一度も「学校へ行きたくない」と言ったことはなく、毎日元気に学校へ行くし、食欲もあるが、母国語ではない言葉での授業や友達との会話にストレスを感じないわけがない。その上、学校のReading Bookのレベルを妹に抜かされて、一時すっかり自信を失っていた時期もあった。

優劣や順位がはっきりするようなことではなく、自分が純粋に楽しんで、自分が好きと思うものを作ることのできる「陶芸」に興味を持ったのだろう、と。

昔A国に住んでいた時に、そのタウンハウスの庭の土が粘土質で、夫が簡易ロクロを作り、みんなで土を水で捏ねて、子供たちと器を作ったことがあった。あの土を捏ねる独特の感触は気持ちがいい。想像通りに形が作れるのも作れないのも楽しい。そして「無」になれる。

作品は焼いているうちに割れてしまったものや、陶芸の先生の不注意で割られてしまったものもあり、結局この1点が手元に残った。あれから3回引っ越しをしているが、大切に保管し、毎年10月になると顔を出す。

そして、毎年あの頃のことを思い出す。小4から中1までに苦労した経験が今の彼女を作っている。「可愛い子には旅をさせよ」とか「若いころの苦労は買ってでもしろ」とよく聞くが、まさにそうである。

ろうそくの光は良い。このjack-o-lanternに初めてろうそくを入れて火をつけた時の、うれしそうな長女の顔が毎年浮かぶ。1年半後は社会人だ。たくさん苦労するだろう。でも彼女はきっと知っている。苦労の先にあるものを。

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12件のコメント

  1. 子供さんにとって慣れない海外の生活で、しかも英語での学校生活は苦労されたと思います。その中での、ほっとする陶芸クラブを楽しまれた様で作品にも表れているように思います。
    可愛い子には旅を!確かにそうですね。逞しく成長されて良かったですね(*^_^*)

    1. 学校は子供が選ぶというより、親の勧めで日本人学校ではなくインターへ入れたので、本当に色々と悩みました。

      でも、当時の友達とも細いですがまだSNSでつながっていますし、姉妹で当時を楽しそうに話すので、ホッとしています。

      1. ご自分のお子さんを信じられてと将来の為を思われてのインターへの入学だったと思いますから、その通りの結果で良かったですね。ハラハラドキドキされた時もあったと思いますが今はお互いが笑顔で話し合えて最高ですね(*^_^*)

      2. 本当に教育は結果がすぐには出ませんからねw

  2. 順位がはっきりすることが苦手。すごくわかります。そういうことに燃えられる人が羨ましく思うこともあります。勝ち負けのつくことは避けたいです。大学の頃体育の授業で卓球をしたのですが、対戦相手が友達だったので棄権しました(笑)たかが体育の授業なのに…

    1. 優しいですね笑、mic.mimicさん。小学生ではなく、大学のころなのですね笑
      私は子供相手でも絶対勝ちたいタイプですw

      長女も本来は負けず嫌いで、長距離走や短距離走でも一番を狙いに練習するような子なのですが、努力し続けてもなかなか越えられない言葉の壁につかれていたのだと思います。そして自信を失って。

      でも、自信を取り戻してからはすごく強くなりました。人の気持ちにももっと寄り添えるようになっていますし。

      何事も経験ですね笑

      1. 小さい時に苦労すると、人より早く心が成長できるような気がします。その時苦労して、今は英語が得意でまわりから羨ましいがられてるのかなと思います。

        頑張ったり苦しんだ先には絶対ご褒美が待ってますよね—の法則を守るべく、ちょっとしんどいことがあった時は自分にご褒美を与えるようにしています(笑)

      2. 私なんて、ご褒美で生きているような人間です笑 おいしいお酒と食事w

        ご褒美は大切です☆

      3. 人生楽しまなきゃ、ですよね。美味しいお酒と食べ物は楽しい!

      4. 本当に!!!

  3. なんだかとってもかわいいジャックオーランタン。宝物ですねー。
    海外生活はステキに思えるけれど、信じられないくらい大変なこともたくさんありますよね。すごくわかります。

    1. ありがとうございます!
      こういう作品は「小学生」だから作れるものなので、大切にしています♪

      ある程度の年齢まで、子供はやはり親の意見に左右され、全部自分で決められるわけではないので、本当に色々と悩みました。私自身も帰国子女なので、子供が海外で生活することの大変さはわかっていても、国が違えば悩みもまた違うので、楽しいことと辛かったこと両方でした。

      nikonikomaisonさんのフランスでの生活、やはり羨ましいなぁーといつも思いますが、苦楽、両方ですよね!

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