サイトアイコン coccocan

満天の星(前編)

blue and brown train
Photo by Prabath Gamage on Pexels.com

A国に住んでいたとき長期休みに南国へ旅行した。夫の急な海外出張先が南国で、仕事が終わったら合流できるとのことで、行き先をそこにした。長女5歳、次女2歳、15年以上前のことだ。

南国の首都から地方のビーチへ行く計画を立てた。後から仕事で来る夫と南国の首都で合流して数日過ごし、ビーチへ私たち3人が先に行く計画だ。ビーチへは列車で移動することにした。スマホのない時代、列車の時刻も調べずに駅へ行ったら夕方の便しかなく、16時過ぎくらいの列車に乗った。2時間くらいの旅だ。その日は日曜日で、夫が駅まで送ってくれた。普通に行けば18時30分ごろには宿に着く予定だ。海外で使える携帯電話は持っていない。

列車の出発駅は東京でいうところの上野駅みたいな感じで、そこが東西南北へ行く離発着の駅だ。列車はだいたい定刻通りに出発した。乗ってみたら、その車両には外国人がいない。地元の人たちばかりで聞こえてくる会話も南国の言語だ。

ちょっと早目の夕飯として用意していたサンドイッチなどを子供たちに食べさせながら、気持ちいい風に吹かれ車窓を眺めていた。途中で気が付いた。車内アナウンスが南国言語のみだ。駅の看板もアルファベット表記があったりなかったり。そもそも、何故か駅のホームに停まらず線路に停まって乗り降りをする。陽はドンドンと落ちて行く。

ガイドブックは持っていなかったが、プリントアウトしたホテルのバウチャーと首都で宿泊した時のホテルにあった観光ガイドらしきリーフレットは持っていた。かろうじて南国言語で書かれている、目的の駅名の文字を指差して、周りの人たちに「次の駅はここの駅か?」と英語で尋ねてみるが首を横に振られる。

そのうち辺りは真っ暗になり、もはや駅に着いても駅の表札は見えない。時間は到着予定時刻をとっくに過ぎている。他の車両に英語かA国語が通じる人はいないか聞き回りたいのだが、子供二人に20㎏のバックパックと大きいスーツケースを持って、狭い車内をウロウロするわけにもいかない。だからといって、子供たちを座らせて、席を離れるわけにもいかない。困った。

困ったは困ったが、子供たちは楽しそうだし、ここで私が不安そうにしても仕方がない。目的の駅に着いたらいつでも降りられるような準備だけして、子供たちが目に届く範囲内を歩いて駅員さんを探した。同時に南国言語が理解できなくても、目的地の駅名くらいは聞き取れるかもしれないと車内アナウンスに耳を澄ませた。が、そもそも車内アナウンスもあったりなかったり。日本って、親切な国だよね。本当に。

最悪、目的の駅で降りられなくても、その次の駅は地元では有名なリゾート地の大きい駅だから、そこならアナウンスか駅の表札が見えるかもしれないと思った。そしてそこからタクシーでホテルまで行けるかも。田舎の駅だからタクシーが掴まらなかったら・・・。まぁそうしたら、そこで他の宿を取るしかない。

次回中編へ その後 後編へ

モバイルバージョンを終了