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徳を積む

寒い冬のスポーツに欠かせないアイテムは、「ネックウォーマー」「手袋」「耳当て」の3つ。これがあれば、北風が強い日やみぞれや雪でも何とか耐えられる。私の冬の3種の神器だ。

つい先日のこと、前日がとてつもなく寒かったので、陽が出ている時間帯だったが、冬の3種の神器を携帯してランニングに出かけた。走り始めると思ったほど寒くなく、手袋はポケットに、ネックウォーマーはウエストポーチへ入れ、耳当てはウエストポーチのベルトに引っ掛けた。

復路で自宅最寄り駅のスーパーで買い物をした。軽い買い物なら、買い物袋を提げて残りを走るのだが、その日は醤油を始めとして重たいものを買ったので、ウエストポーチを腰から取って買い物バッグへ入れて歩くことにした。

スーパーから出て10歩ほど進んで、耳当てがないことに気付いた。スーパーでウエストポーチを外した時に落ちたに違いない!と思って戻ったのだが、ウエストポーチを外した付近にはない。サービスカウンターで聞いてもない。

自分が歩いた道順を思い出して、忠実に店内を歩く。棚の下に入り込んでいないかもチェックした。ない。

耳当ては、これ以外家に4つある。そして、この耳当ては18年くらい前にA国で、20円前後で買ったものだ。0を間違えているわけではない。「二十円」前後。

しかも、何故この迷彩柄を選んだのかも不明である。迷彩柄のモノは一切持っていないし、もらったこともない。そのとき、この迷彩柄と一緒に黒・紺・灰色は売られていたはずなのだが、何故かこれを選んだ。永遠の謎である。

20円の耳当てを20年近く使ったんだから、、、と思うかもしれないが、この耳当ては特別だ。他のモノはスポーツでは使いにくい。この子は薄いのに暖かくて機能的。薄いから雨や雪でもすぐに乾く。そして、走っても耳から落ちなくて軽い。ずっと私の相棒だった。

どうしても見つけたい。

幸い、日が暮れるまでには時間があるし、走ったのは線路沿いの一本道。同じ道を走って来たので、帰りに落としたに違いない。ストレッチをした公園で落としたのだろうか?片道3㎞ちょっとの道を往復したのに、家とは逆方向に引き返すことになったのだが、諦めたくない。

私はランニングをするからか、歩道の落とし物をよく見かける。道の真ん中にあると踏まれたり、自転車が気付かなかったりするので、手袋、靴、おもちゃ、ハンドクリームなどを歩道脇の生け垣やポールなど目に付くところに置くようにしている。風が強い日は飛ばされないように、どこかに結ぶことも。

スーパーからストレッチした公園までは片道1㎞。6㎞ランニングした後に往復2㎞。夏でなくて良かった。てくてくと急ぎ足で歩いていると、公園までの途中500mくらいのところ、ポールの上に私の耳当てが置いてあった。

私は嬉しくて、そこに置いてくれた見も知らぬ人に、その場で何度もお辞儀をした。心から感謝した。思えばこの耳当ては、A国での極寒の冬を何度も支えてくれたアイテムでもある。

「徳を積む」ほどのことを普段しているかどうかはわからない。自分が決めることではない気がする。でも、大荷物とベビーカーを押している人との荷物を持って一緒に改札へ行ったり、年配の人の荷物を運んだり、気が付いたときは声を掛ける。そういう何気ない日常を大切にしよう。改めて気を引き締めた。

そして、置いてくれたその人にも、いつか良いことがありますように。本当にありがとう。

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