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もてない!(前編)

「田んぼと電車が一緒に見える絶景スポットがあるから」と夫が言う。8月最後の土曜日に行こうというのだ。その前に次女が夫の家の近くにある美術館が良いらしいと言っていて、「美術館でも行こうかな」と私が言っていたので、「美術館でも良いよ」と小さい声で付け足すように言う。そして、いかに田んぼと電車のコラボが素晴らしいか珍しく口数が多い。猛烈にプッシュしてくる。「別に美術館でもいいけれど」とボソッと付け足す。

そもそも芸術に造詣が深いわけではないし、美術館に行くならば下調べして少し勉強して行かないと、「ふーん」で終わってしまいそう。真夏でもサッカーもランニングもするくらいだから、「まぁ散歩というかウォーキングね」と思って、何度もしつこくプッシュしてくるその絶景スポットへお弁当を持って行くことにした。

本当は土曜日の朝、夫の家から移動して土曜日の日中にサッカーの練習へ行くつもりだったのだが、2年ぶりの夫の家だし、用事や仕事のついでがないとなかなか来ないので週末もいることにした。

朝、弁当と帰りに立ち寄る風呂屋の準備をして、お茶も多いかな?と思ったが二人で3Lほど持った。着替えようとすると夫が「木陰も何もない道だから、日焼けしないような服が良いと思うよ」と言う。そんな話は初耳だ。樹々が生い茂る遊歩道を歩くのだと勝手に思い込んでいた。というか、その日の最高気温は36度だ。「美術館にする?」と夫は弱弱しく言う。

あれこれ考えても仕方がないので、とりあえず”絶景スポット”へ出発した。途中農協でトマトだけ買って歩き始めた。気温がドンドンと上がって行くのが肌でわかる。それでも、建物や家の影があるところを選んで歩けば、風は割と爽やかだ。隣の駅を通過して少し歩いたところは視界が開けていて、田んぼと田んぼの間に2両編成の赤い電車が通って行く。「うん、なかなかだ」これが見せたかったのかと思ったら、どうやら違うらしい。

途中、散歩コースとなっている高台の水路に沿って歩いた。木陰と水が近くに流れているので、かなり陽が高くなっているが、まぁ楽しい。梅、柿、キウィなど色んな木もあるし、花もきれいだし、暑いけれどもまぁ良いではないか。

散歩コースの案内板があったので、ここで初めて私は「どこまで行くの?」と聞いた。夫は地図を指して駅名を答えた。「あぁ、もう少しね」と私は言った。散歩コースを歩いていると日陰にある良い感じのベンチもあり、夫に「どこでお弁当食べる?」と聞いた。夫はどこにしようかね、と言いながら歩きそのうち散歩コースは終わり国道へ出た。

夏の太陽が照り付ける国道沿いは歩いている人なんていない。太陽も必死で最後の雄叫びを上げているかの日差しだ。でも、地図上で目的地を確認したから「あともう少し」と思っていた。するとなんだか素敵な雑貨屋さんを発見。セールをしている。娘が欲しがっていた系の折り畳み傘が安くなっている。散歩はこういう寄り道が楽しいよね。

次回「もてない!(中編)」に続く もてない!(後編) もてない!のおまけ編 もあるよ

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