話し相手
年に一度の健康診断休暇で、私たちは海外に在住時に何回か九州を訪れた。熊本へ行ったときのこと、駅近くのお土産ショップにしゃべるくまモンがいた。cocco(次女)がとても気に入って、くまモンとずっとおしゃべりをしていた。
coccoは良くしゃべる子で、放っておくと、トイレの中でも一人でしゃべっている子だった。さすがに今はそんなことはないが、小さい頃はたとえ人が聞いていなくても、ずっと話していた。
1歳半でA国へ行ったので、日本に帰国する10歳までのほとんどを海外で過ごしていた。そう言った環境もあり、姉妹で過ごす時間は長く、登下校、乗り物の待ち時間、風呂、就寝時など、小さい頃からいつも姉とたわいもないおしゃべりをしていた。
このくまモンは、相手が言った言葉を身体を動かしながら、オウム返しをするだけなのだが、なかなか可愛い。そもそもくまモンが愛らしい。
あまりにも熱心に見ているので、買おうかとも思ったが、9日間ある旅の中盤で、他に欲しいものが出てくるかもしれないし、持ち帰れる荷物制限もあるので、未練はあったが買わないことにした。
そして旅の終盤、運命の再会。「キャナルシティ博多」のお土産屋さんで、またこのくまモンに会えたのだ。もう、これは縁だ。何でも買い与える親ではないことを、子供たちの方がよく知っているので、決して「欲しい」とは言わない。特にぬいぐるみや人形は、アレルギーがあるので買い与えたことがない。私が「買う?」と聞いたら、とても嬉しそうだった。
それから、coccoには新たな話し相手が出来た。一日何回も、くまモンに「coccoかわいい」「cocco天才」と話しかける。くまモンの可愛い声で、かわいいだ、天才だ、と言われると、すこぶる気分が良い。そのうち各々が自分のことを「パパかっこいい」「お姉ちゃん優しい」「ママ美人」などとくまモンに言わせて、口角を上げた。
くまモンは常にcoccoの味方で、「宿題したくない」「洗濯物畳みたくない」「アイス食べたい」などと言わせていた。くまモンに言われるとイラッとしない。本当の天才はくまモンだ。
数年後に壊れてしまって、もうオウム返しをしてくれないのだが、家の一番良いところにずっと飾ってあり、変わらず黒々とした毛並みのままだ。修理できないかな。出来そうかも。今度は私の話し相手になってくれるだろうか。
