先生に映る遺伝子

長女の卒業した高校は年に2回保護者会があって、かなりの保護者が集まる。海外組以外来ない親はいないのではないかと思うくらいで、父親の参加率も高く、夫婦で出席する家庭も珍しくない。だからなのか、PTA活動も活発で、先生・生徒・保護者の距離が近いように思う。担任の先生にもよるのだろうが、先生と生徒、先生と保護者が割と仲が良い。

長女はラッキーで1年の担任、2・3年の担任ともに、超ベテラン名物先生だった。2・3年の時の先生は風変わりな先生で、最初は生徒も保護者も戸惑うらしく、我が子も私もドン引きだったのだが、進路指導も多角的な観点から色々と相談に乗ってくださったらしく、年度の終わりに生徒はみんなベテラン先生に親しみを持っていた。

そのベテラン先生の保護者会は変わっていて、保護者にグループワークをさせる。しかも先生はきちんと配布物を用意し、我々はグループ毎にディスカッションし、各グループが順番に発表しなければならない。結構ディープ?センシティブ?なお題ばっかりで、最初は「どうなのよ?」と思っていたが、しっかり進めないと帰宅時刻がどんどんと遅くなるので、早く帰りたい私はグループの意見をチャカチャカ聞き出し、メモし、まとめて、率先して発表した。

毎回こういうことをやっていると、保護者の皆さまとも仲良くなり打ち解けて、グループディスカッションも面白可笑しく和気あいあいと話し合うようになっていった。そして、毎回早く帰りたい私は仕事のように仕切り・まとめ・発表する係を買って出た。

他の保護者の方と各々の子供のこと、学校や家での様子、兄弟のこと、結構色々な話が聞けたし、かなり核心を突くようなお題だったので、親御さん自身の家庭環境や家族構成、夫婦関係なども垣間見ることができた。先生の意図は保護者間でコミュニケーションを取ることだったのかな。どうなのだろう。ただ一つ言えることは、1年の時のクラスの保護者も2・3年の時の保護者も今だに仲が良い。

この学校は制服のない学校で、ほとんどの女子は卒業式に袴を着る。卒業式と最後のHRが終わると学校でドレスに着替えてプロム会場へ移動するのだ。よって、母親は大きなカバンやスーツケースにドレスを入れて卒業式へ持って行き、袴と着物を家に持ち帰るのだ。生徒たちはプロム会場へ移動し、先生と保護者は学校のラウンジで生徒抜きの「謝恩会」を行うという日程だ。

夫も私もその学校を気に入っていたのだが、保護者会に単身赴任の夫が出ることは一度もなかった。よって、卒業式と謝恩会は夫婦で出席しようと考えていた。しかしながら、次女の高校入学説明会の日と重なってしまい、長女の着替え・ヘアメイクを父親に任せるわけにもいかないので、夫には次女の説明会の方へ行ってもらった。

謝恩会は想像以上に楽しかった。主役の子供を抜きにして、大人だけでワイワイと先生を囲んで楽しんだ。その歓談中、ベテラン先生は私に話しかけてきた。「〇〇さん(長女)はおうちでもあんな感じなのですか?」と。「あんな感じとは?」と聞き返した。「おっとりしているというか、天然と言うか。。。」周りのお母さんたちが笑った。先生にまで「天然」と言われているのかうちの子は!と私は心の中でつぶやいた。「そうですね。のんびり、おっとりしていますかね。」と答えた。そして先生はさらに付け加えた。

「〇〇さん(長女)は、お父さんに似たんですね。」

ベテラン先生は夫に一度も会ったことがないし、私にだって数回保護者会で会っただけで、個人面談もしていないので、個人的に話したことはない。全体保護者会とクラス保護者会の間に昼食をとるのだが、いつも教室でお弁当を食べていた私は、先生に「プリントを配っておいてください」と毎回頼まれ、少し会話をする程度の接点しかなかったはずだ。保護者会での私の様子を覚えられていた以外に心当たりはない。

みんなドッと笑った。先生の勝ちだ。

間違ってはいない。確かに長女はキビキビ仕切って、バリバリ発言するタイプではない。私のそういう積極的な遺伝子は彼女には全く受け継がれてはいない。ベテラン先生は、2年間毎日のように顔を合わせていた長女に母の遺伝子は見いだせなかったらしい。

私は思った。今までの歴代先生も全く同じことを思っていたのだ。きっと。誰も口に出さなかっただけなのだろう。でも、忘れないで。間違いなく私が生んだんだよ。

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1件のコメント

  1. […] 高校の担任の先生にも「天然」と言われるくらいおっとりとしているのだが、見た目に反して芯が強く、打たれ強い。他人と比較して集団の中での勝ち負けで挫折することは、今後もなさそうだ。 […]

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