おねだり    

おねだり  

5月のこと。ふらっと帰って来た長女が通勤用の靴とお洒落カバンが欲しいというので、近所のデパートへ行くことにした。

うちの娘たちはちょっと値の張る欲しいものがあるときは、必ず母を誘う。(父がいれば父を誘うことも)要は「買ってほしい」のである。たまにしか一緒に買い物には行かないので、こちらの財布のひもも自然と緩くなる。普段、外でお茶などしないのだが「甘いものでも食べる?」なんて、なぜか優しくなる。  

毎年1月2日、近所のデパートの初売りの日、年末年始疲れの私は一人になりたくて、商品券を渡して夫と子供たちを「初売りで何か買ってきな。(お金)足りなかったら、パパに出してもらいなさい。」と言って追い出す。そしてビール片手に、箱根駅伝と高校サッカーを存分に楽しむことにしている。

娘二人は毎年のように、お揃いの服を購入し、スイーツを買って来る。行きは3人で出かけるのだが、帰りは夫一人で帰って来る。さらに買い物を続ける子供たちを残して、荷物だけ持って戻ってくるのだ。娘たちもお目当てのモノを買ってもらったら、後は2人でゆっくり見たい。  

親とはそんなものだ。  

そんなものだったのに、その5月のデパートは違った。私がお金を払おうとすると「自分で買うから良い」と言う。雨の日用の、そんなに高価な靴ではなかったので、「では私はカバンの方を買ってあげよう」と思った。  

駅の両側のデパートを行ったり来たり、エスカレーターを上がったり下がったりしながら、長女の好みの鞄をくまなく探した。長女はモノにたいするこだわりが強く、気に入ったものをずっと使うタイプである。カバンも流行はあるだろうが、そういうものに左右されない「気に入ったもの」が欲しく、自分が理想としている大きさや色があるのだ。  

私は長女に「カバンなんて頻繁に買い替えるものではないのだから、良いモノ買った方がいいよ。買ってあげるから値段は気にしなくていいから。」と告げた。  

彼女から返ってきた言葉は「お給料も入ったから自分できちんと買う。」だった。  

就職が決まったときに「卒業・就職祝いは何が良い?」と聞いたのに、結局、時計もアクセサリーも選ばず、卒業旅行に多額?のお金を貸しただけで、何も贈っていない。なので「就職祝いも上げてないから」と付け加えたのだが「自分で買う」と言う。  

頼もしいし、嬉しいのだが、同時に淋しい。。。  

とは言え、仕事用の靴やお洒落カバンを選ぶのに、駆り出されるのは悪くない。4.5年前までは「忙しいから」と言って、「一緒に買い物」が面倒な時は、お金だけ渡すこともしばしばあった。冷たい親だ。今は一人暮らしの余裕なのだろうか、歳を取ったのだろうか、娘とのショッピングが「嬉しい」と思う日が来たのだ。  

ガツガツとせかせかと生きて来たタームが過ぎ、見逃してきた娘との時間を取り戻す時期が来たようだ。「自分」中心に生きて来た私の、最後のチャンスだ。

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6件のコメント

  1. お嬢さんはピカピカの社会人1年生ですが収入もあるからでしょうね。
    親として寂しい面もあるでしょうが、生きて行くうえで頼もしいです(*^_^*)

    1. 親が一生そばにいられることはあり得ませんし、社会人にもなって親にお金を無心したりおねだりするようでは困りますしね笑

      自分のお給料をやり繰りすることも覚えて行かなければいけませんし!!

  2. 余裕ではなくて自覚だと思います。
    素敵です。
    親は、子が本当に困った時のためにスタンバイしないといけないのでしょうね。
    素晴らしい育ち方をされていて羨ましい限りです。

    1. 頼もしいお子さん達をお持ちのパッチングワーカーさんに褒めていただけると、とても心強いです!!

      >>親は、子が本当に困った時のためにスタンバイしないといけない
      →本当にそうですね。経済的にも体力的にも、少しでも長くいざというときに動けるようにしたいと思います☆

  3. こんにちは(^^)
    娘さんが自立の行動をとるようになったのは良い事だし、親としても受け入れる方がベターな選択だと思います。子供が自立できるかどうかの責任は子がいくつになっても、半分は親にあると思ってます。

    1. 精神的に生活的に経済的に自立・自活させることが、子育てのゴールだと思って育てたので、きちんと意図が伝わっていたのだと嬉しく思っています☆

      子供たちとの物理的な年齢差が変わることはないのですが、精神年齢は近づいているのかなと感じます。

      たまに娘とショッピングをするのも良いものだと思いました♪

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